2013年8月14日水曜日

ボブ・ディランのDesireという、私のここんとこのお気に入りのアルバム

 「街を走る車が極端に少なくなっているよ」と仕事から帰ってきた長男が云った。私は終日引きこもりのようにパソコンの前に張り付いているので街の様子を窺い知るすべがないのであります。街が喧騒なのか静寂の中にあるかなんてこととは一切関わりなく、なんのためにもならない文章などを書き散らして毎日暮らしているわけであります。
 毎夜音楽をかけて酒を呑んでいます。酔っ払ってくるとどうしても聞きたくなる曲があります。それはボブ・ディランであります。ディランは私にとって演歌であります。本当は歌詞の内容がわかっていればもっといいのですけれど、なにせ英語はさっぱりわかりません。ディランであればなんでもいいのですが、最近の私のお気に入りのアルバムはDesire (Reis)というものです。このアルバムを聞くとどんどこと酔っ払ってしまっています。



少しは歌詞の意味がわかったほうがいい。いや何を歌っているのかを知りたいと思い検索してみましたら、下のような訳詞がみつかりました。なんだか、知らなかったほうがいいような、やはり知ったほうが良かったような複雑な気持ちであります。語学力のない哀しみをしみじみ感じたしだいであります。

姉上様
Oh, Sister

姉上、あなたに身をまかせたいのです
他人のようなそぶりはなさいますな
父上はそのようにはなされなかった
危うさにお気づきなさいませ

姉上、弟をお忘れとは信じられません
優しくしていただいてよろしいはず
この世界に決意を同じくし
慈しみ 従いましょう神の思し召し

ともに育ち
ゆりかごから出てふたりみまかるまで
召され再び生を受け
神秘のうちに贖われた

姉上、あなたの門をたたくとき
あらぬほうをみては不幸を造ります
寄せる海も岸まで 時さえ尽きる世の常
明日は届かぬ身かもしれませぬ


ジョーイ
Joey

ブルックリンはレッドフックの生まれ 生年不詳
アコーディオンが子守唄
仲間を選ぶと必ず少数派
お天道様の向きがそっちだそうだ

ラリーが年長 ジョーイはずっと下
あだ名はクレイジー・ジョー またの名をつむじ風小僧
博奕と呑みで食ってるという噂
マフィアと警察の隙間が居場所

ジョーイ ジョーイ
裏街の親玉 泥道の少年
ジョーイ ジョーイ
どこのいざこざで命を落とした

抗争だとか違うとか
訳知らずが騒いでいるだけ
ラリーを潰す策略に腹を据えかね
あの夜弾丸除けになろうと報復に出た

夜明けの大抗争 通りに人の姿はなく
ジョーイと兄弟たちの手痛い敗北
覚悟の上で5人を人質に引き揚げ
このしろうとたちを地下室に隠した

震える5人の人質に男が言う
ここを爆破する 不良のエディソンをうらめ
ジョーイが腕を突き出し 爆弾は俺達には似合わない
元の暮らしができればそれでいい

ジョーイ ジョーイ
裏街の親玉 泥道の少年
ジョーイ ジョーイ
どこのいざこざで命を落とした

警察は追求した「スミスさん」呼び名はていねい
共犯の容疑だが 主犯が誰かは問題でない
何時だ 判事がジョーイに聞く
あと5分で10時 刑は5年以上10年以下

アッティカ刑務所に10年 ニーチェとライヒを読んだ
独房入りは殴ったときに1回
黒人とは仲良くできた わかっているから
世の中の下積みの苦労を

71年いくらかやつれて街に戻った
ジミー・キャグニー風の貫禄の着こなし
なじんだ仕事に戻るつもりでボスに掛け合う
復帰するんだ取り分を返してくれ

ジョーイ ジョーイ
裏街の親玉 泥道の少年
ジョーイ ジョーイ
どこのいざこざで命を落とした

晩年銃を持ち歩かなかったのは本当だ
こどもたちは知らない方がいい いつも言いながら
生涯の宿敵 クラブハウスへ乗り込み
レジの金をさらって クレージー・ジョーだ 覚えておけ

ニューヨークの貝料理屋での狙撃事件
フォークを口に運ぶときに敵が見え
テーブルを盾に家族を守り
よろめきながらリトルイタリー街に逃げた

ジョーイ ジョーイ
裏街の親玉 泥道の少年
ジョーイ ジョーイ
どこのいざこざで命を落とした

ジャクリーヌとカーメラの姉妹 母のメアリーの嘆き
親友のフランキーが言ってた 眠っている 死んではいない
ご老人のリムジンが墓地に戻るのが見えた
救えなかった息子への最後のはなむけだろう

日は落ちて冷えたプレジデント街 ブルックリンは喪に服し
古い教会での追悼ミサ この街で生まれた
いつの日か神が守護の光で満たすときまで
彼を殺した罪に救いはない

ジョーイ ジョーイ
裏街の親玉 泥道の少年
ジョーイ ジョーイ

ハリケーン
Hurricane

夜の酒場にとどろく銃声
階段を下りたパティ・バレンタイン
血の海にバーテンダー
皆殺しだわ どうしましょう
ハリケーンの話はこうして始まる
官憲が負わせた罪は
とんだ濡れ衣
この囚人の手の届くところにあった
世界チャンピオン

パティが見た3つの死体
怪しく動く別のひとりはベッロ
俺じゃない 両手を挙げて
レジの金を狙っただけだ うそじゃない
逃げるやつらを見た 口ごもりながら
警察を呼んだほうがいい
パティが電話をかけ
赤いライトを点滅させて警察の出番
ニュージャージーの夜の熱の中

そのころ離れた別の街角で
仲間と車を走らせていたルービン・カーター
ミドル級のランキング1位
これから起こるごたごたを知るはずもなく
検問で車を停めさせられた
前にもあったしこのときも
パターソンの街ではいつもそんな風だ
あんたが黒人なら大通りには出ない方がいい
騒ぎに巻き込まれたくないなら

前科者のアルフレッド・ベッロには相棒がいた
ベッロとアーサー・デクスター・ブラッドリーはおずおずと
話によると逃げた二人はミドル級の体つきで
白い車はよその州のナンバー
パティ・バレンタインはただうなずく
おい、まだ息があるぞ と警官
病院へ搬送された被害者は
何とか目は見えるようだし
犯人の顔は覚えているそうだ

朝の4時にルービンは引きずり出され
病院へ連れて行かれ病室に
ベッドからまだ見える片方の目で見上げ
なんでこいつを連れてきた 人違いだ
ハリケーンの話はこんな調子だ
官憲が負わせた罪は
とんだ濡れ衣
この囚人の手の届くところにあった
世界チャンピオン

4か月経ち黒人街に火がついた
ルービンは南米で興行の試合
アーサー・デクスター・ブラッドリーは相も変わらず泥棒稼業
警察は奴をしめつけ口を割らせようとした
酒場のできごとを思い出せ
逃げた車を見たんだな
法律のご厄介になりたいか
逃げていったのはボクサーだろう
いつから黒人の味方になったんだ

はっきりしないんだ とアーサー・デクスター・ブラッドリー
お前のような貧乏人にめぐったチャンスだ
モーテルの盗みのネタも上がってる 仲間のベッロもしめあげるか
監獄に戻りたくなければいい子でいろ
それが社会のためってもんだ
あのろくでなしが大手を振ってますます増長する
ケツに火をつけてやったほうがいいんだ
あいつが3人殺したことにしちまおう
紳士のお里が知れるってとこさ

パンチ一発でどんな相手も倒せるのに
ルービンはそんな話は嫌いだった
それが仕事 金のためだ と言う
役目が済んだら好きなようにする
どこか天国みたいなところがいい
流れに鱒が光り薫る大気
小径で馬を駆る
その彼をやつらは監獄に入れた
人間をネズミに変える実験所

ルービンの持ち札は読まれていた
裁判は汚れた豚のお祭り 勝ち目はなかった
判事が認める証人はスラムの酔いどれたち
白人の傍聴人にとっては過激な武闘派
黒人の傍聴人にとっては変わり者
引き金を引いたのはあいつと決めて疑わない
証拠の銃は発見できないのに
地方検事は彼を犯人と断定し
白人だけの陪審は同意した

ルービン・カーターへ不正な判決
第一級殺人罪 何を証拠に
ベッロとブラッドリーの明白な偽証
それに興味本位で書きたてた新聞
これだけの男を
阿呆どもの思うままにさせたのは誰
罠に落とされたのは明らかなのに
ああこの国に生まれた恥辱
ここでは正義は勝ったもののためにある

悪人たちは上着をはおりネクタイを締め
マティーニ片手に眺める朝の太陽
ルービンが仏陀のように座る3メートルの独房
生ける地獄の無垢の男
ハリケーンの話はこんな調子だ
話はまだ終わらない 疑いを晴らすまで
失った時間を取り戻すまで
この囚人の手の届くところにあった
世界チャンピオン


アイシス
Isis

5月の5番目の日 アイシスと結婚した
じっとしていない性格だから
髪を短くして脇目もふらず馬を飛ばした
未知の荒野が俺の行く先

闇と光の高き所
境界は街からここまで続いていた
杭を見つけて馬をつなぎ
洗い場で服を洗おうとした

門口の男が手を組もうという
一目でわかるできるやつ
うまい話があるそうだ
金はないと話すとかまわないと言う

出発はその夜 極寒のノースカントリーへと
毛布をやると話し始めた
行く先を聞くと4日には戻れるところだそうな
そんな間抜けを誰が言うんだか

ターコイズだろうか 金塊だろうか
ダイアモンド それとも世界一のネックレス
いくつもの谷を通り信じられない寒さを耐えた
アイシスはきっと 俺のむこうみずに呆れたろうよ

言ってたっけ いつかばったり出会って
また一緒になれば 前とは違う暮らしが待ってる
しっかり捕まえて 仲良くするだけでいい
もっといいことを言ってたはずだが忘れてしまった

氷に埋もれたピラミッドを見つけた
ミイラを探すぞ とあいつ
掘り出せばいい値が付く
やつの目的がその時俺にもわかった

風はうなり雪は荒れ狂った
夜通し削って明けても削った
やつが死んで祈った とりつかないでくれ
心を決めたさ 一人でもやり通すと

墓所に忍び込むと棺は空
宝石もなく何もなく 乗せられたか
相棒へんに最初から愛想良かったが
もうけ話に浮かれて分別無しもいいところ

遺骸を墓へひきずって
穴に投げ込みおおいをかぶせ
ちょっと祈って心をいやし
アイシスめざして馬で戻った 好きだと言うんだ

川辺の草原で彼女に逢えた
疲れと眠気で目を開けられず
東から近づくと日光が目を射した
ひとしきり彼女を恨んで馬を進めた

「どこにいたの」と聞くから「普通のところさ」
「かわったわ」というから「そんなには」
「帰ってこないのかと」「むりもない」
「もう行かないのね」「そりゃそうだ」

アイシス アイシス 神秘の子
あなたへの愛と無鉄砲が一緒に住んでる俺の心
今も忘れないあのときの微笑み
あれは5月の5番目の日 細かな雨の降る日


モザンビーク
Mozambique

モザンビークで時を過ごすのが好きだ
晴れわたった空は透き通った青
どのカップルも頬寄せダンス
一週間か二週間いられるととっても素敵

かわいい娘がモザンビークにはいっぱい
楽しい恋愛の時間もたっぷり
顔を合わせるとロマンスの話
君がほしがるチャンスがごろごろ
挨拶だけでひらめくことも

ふたり並んで海原を見ながら
伸ばした手を彼女の手に重ね
秘めた思いを囁く
神秘の国での魔法のできごと

モザンビークを去るときがくれば
砂浜と海にさよなら
ふりむいてなごりの流し目
こんなのはここだけの気持ち
晴れた心の愛すべき人たち
モザンビークの陽の当たる浜辺

どこのいざこざで命を落とした

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