2008年11月8日土曜日

気分だけはすっかりいっぱしの登山者なのだ

尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場

 尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場から沼山峠に通じる旧登山道を少しだけ歩いて見た。現在はアスファルトの国道が尾瀬御池ロッジまで通っており、そこから先はシャトルバスを使用しなければ沼山峠まではいけないようになっているのです。

 尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場に到着した初日にはすでにオートキャンプ場は閉鎖された後であったが、管理人の星さんの奥さんである侑子さんにお会いした。自家用に栽培しているナメコの様子を見にきたということでありました。
尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場

 管理人の星さんの自家製のナメコはけなげにも成長しておりました。ただ寒さも増しており、以前の勢いはなくなっているとのことです。来秋になったら食卓を楽しめてくれることでありましょう。一通りナメコの栽培地を見学した後に、少し周囲を歩いてみますかというので、何十年もこのあたりを訪れているのに、この周辺の散策をやったことがなかったので渡りに舟ということでお願いしました。

尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場

 周囲は息苦しくなるほどの晩秋の気配であふれかえっております。ときおり風がことばを運ぶように周囲の木々を揺らしては去っていきます。キラキラと乱反射してカラ松の針のような黄色芯が舞っています。
 「ひさしぶりにこの辺りを歩くわ・・・」と侑子さんはひとりでハシャギながらズンズンと奥のほうに歩みを早めます。私はその後を遅れまいと必死でヨタヨタ歩きを繰り返していくのでありました。

 ふと私の脳裏に「圧倒的」という言葉がよぎります。独りの人間なんか到底適わない、どんな理屈の前にもこの自然の無言で迫ってくる感じ。私は自然頭(こうべ)をたれそうになるのに抵抗しつづけた。
 そうだよな「圧倒的」だよな。この「圧倒的」という言葉がこの場にまさしく似つかわしいよな、と自分の幼稚な言語能力を駆使して必死に思っているのでありました。

尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場

 この橋を渡った途端に結構な急斜面の登山道が続くのです。これまで御池ロッジまですいすいと車でしか登ったことがない私にとって軽いショックが襲う。そうか山に登るってことはこういうことだったのかというこれまでの浅はかな認識が根底から覆されることになるのです。

 と同時にいつもの感覚でサンダル履きでこなかったことにホッとする。これまでの私はどこへ行くのもサンダル履きなのであります。キャンプ生活なんてものもサンダル履きが一番楽だと思いこんでいたものですから。

 侑子さんからナメコの栽培場所まで行ってみますかと誘われたときに、好奇心旺盛な私は2つ返事で「いきます、いきます、この世が終わってもいきます」と応えると同時に、履いていたサンダルをとっさに靴に履き替えたことが正解だったようであります。

尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場

 橋を渡ってから急な斜面を登り続けました、侑子さんも何年ぶりかでこの橋を渡ったそうです。なんか一人懐かしさに浸ってる感じで、途中私はおいてきぼりを食ってしまいました。しばらく登り続けたら視界が急に開けた平坦な道にでて、そこで立ち止まって景色を眺めていた彼女は、私の心を見透かしたように、そろそろ戻りましょうかといったのであります。

 登山道最初の橋を渡って行き着く先は沼山峠とはわかっている。しかし、途中がどうなっているのか見当もつかない。私の次の課題はこの登山道をゆっくりでいいから登ってみることだということだけははっきりしてきた。普通の人で3時間だという、普通でない私は6時間ほど見れば良いだろう。それで帰りはシャトルバスで下山すればなんとかなるだろうと思っている。
 なんでもやってみなくちゃわからんもんだよ。よもや死ぬようなことはあるまい。
尾瀬 檜枝岐村七入オートキャンプ場

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