2011年5月15日日曜日

「まさかこんなことが?」なんていう不条理が何食わぬ顔をしてまかりとおるのが現実です

 まったく安心できないという現状を知ったときから私の放浪癖はぴたっと止まってしまった。
「なぁにオレ独りぐらい家にいなくても家族の生活は平常どおりにまわっていくさ」という、どこかに家族と社会への信頼があり、それらを前提とする安心と甘えがあったからこそ、いい年をした親父が家出を繰り返すことができたのだ。
 振り返ってみれば私の人生にとっては、実に自由で幸福な10数年間であった。不思議なことに旅して回っている時はひとつも幸福だと思わなかったのだけれども。
 それはそれは独りぼっちで寂しくて不自由で情けないほどに心細くて心身ともにぼろぼろになっていたような気がします。だから最初に独り旅を始めた頃は2日もすれば何らかの理由をつけて自宅に逃げ帰っていたのです。それでも体裁というものがあるから、旅はいいよとさかんに吹聴して回っていた。
 いつもいつも這々(ほうほう)の体で逃げ帰っても、しばらくすると旅にたいするエネルギーのようなものが沸き上がってきて、自分では2度といきたくないと思っていても、気がついたら意に反して旅の空の下ということばかりであった。

 3月11日の日を境にして、これまでの私の旅は終わったのかも知れないと思う。また旅に出ることはあるかも知れないが、それはこれまでの意味合いとは、大きく違うような気がしてならない。

 また、このように不安定な状況で家族を残して自分だけ遠くの空の下にでかける気分にまったくなれない。いつ大規模な余震があるかも知れないし、なによりも一番問題なのは福島原発の状況も定かでない中で大量の放射能に襲われないとはひとつも断言できない。

 もうすでにどうしようもないぐらいに放射能に汚染されているのかも知れない。でもひとつも情報を出してこないから、判断のしようがない。本当の事を出したら国民がパニックを起こすかも知れないと思っているのなら、まったく国民を信頼してないことになる。国民を信頼してないから、逆に国民にも信頼されないという・・・・。なにがどうなっているのやら。

 日本国中たとえどこへ行っても無駄とはわかっていても、脱出する真似事ぐらいはしなければいけないかも知れないからだ。
 それがこれまで私の我が儘を許容してくれていた家族への努めだと独り思いこんでいるのです。放蕩息子というのは良く聞くが、そうざらには放蕩親父なんていうのはおるまい。まして秩序ただしい現代社会に於いては。


 これまさしく「父帰る」か・・・・・。




 福島原発の核爆発以来こんなにも信用できない政府だったのかなと思う今日この頃なのだが、もともと政府なんていうものは信用ができないものだったのを見て見ぬふりをしてきただけだったのではないかとも思う。
 何ごともない時には、それはそれで済んだのだが、国家の一大危機なんていう状況になって始めてそのアラレもない国の姿を始めて見えてきたのだとも思う。

 ある人は政治家が悪いという、ある人はアホな国民が悪いともいう。どれも一理あると思うが、今この存亡の危機にあって誰かを、もしくは何かを責めたとしても、何ひとつ解決はしないこともわかりきっていることだ。

 最近良く考えることは、自分の立場を置き換えてみるということです。例えば自分が東京電力の社長であったならば、自分が管総理であったならば、経済産業省のお役人であったならば、文部科学省のエライ立場であったならば、テレビ局の経営者であったならば、大新聞社の社長であったならば・・・・・と
 やっぱり彼等と同じようなことを考え行動していないかということであります。いやオレは絶対に彼等とは違うとは言い切れない部分がたくさんあるということであります。だってそれまで過大な恩恵に浴してきたわけでありますから、その既得権益を仲間と共に何がなんでも守りたいと考えるのが普通だと思うのだが。

 自分が権力を持った場合に何も悪いことを行っているという意識なしに、むしろ良いことを行っているという信念すらあるのかも知れません。
 ここには多分に私の僻(ひが)み根性なるものが入っていることは否めません。人にはこれまで継続されてきた立場立場というものがあり、思考範囲もそこから悦脱するなんてことは余程のことが無い限りできることではないと考えるのが当たり前と思ったほうがいいのだということです。

 だから「此の期に及んで、あいつらまだあんな事をしようと考えているのか!」なんて憤ってみても、所詮それはごまめの歯ぎしり程度のことで、何も変化しないということであります。こうして私たちはあれよあれよという間に、奈落の底まで落ちていくものなのです。「まさかこんなことが?」なんて思っても現実的にはその、まさかが平然とした顔をしてまかり通るということだと思います。

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