2009年5月14日木曜日

ちょっとだけ年喰った座敷童(わらし)のサトやん

 今回は怪しい面々隊の最古参隊員である座敷童にしてはちょっとだけ年を食ってしまったサトやんの紹介をするこにする。

 怪しい面々隊には実に怪しい人物だけが集まっている。ひょっとしてまともなのは私ぐらいしかいないと云っても過言ではないだろう。

 人生イロイロなんだから自然の中での過ごし方だっていろいろなものがあっていいと思う。キャンプをするのもいいし、山小屋に泊るのもいいし、野宿するのも良しだと思う。それぞれの楽しみ方があって当然であると思う。釣りでも山菜採りでもそれぞれに楽しめばいいのです。それに野糞野ションベンを・・・。おっと失礼 話があらぬ方向にいくところでありました。

 今回初めて留三郎小屋で会ったのが座敷童(わらし)のサトやんであります。昨年から管理人の侑子さんから噂は聞いていたのでありますが中々会う機会がありませんでした。
 来てるというので恐いモノ見たさに恐る恐る挨拶に出向いたのですが、聞きしにまさる変人。いや失礼、ワガママいや唯我独尊いや孤高の人でありました。ちょっと見にはただのおっさんですけれどもね。しかし、しかしだ諸君、人は見た目で判断してはいかんということだ。ドン(机を強く叩いた音)うーんこのあたりは実に芸が細かいな

 サトやんはこの七入オートキャンプ場に住み着いて30年以上になるという。はっきり言ってこのキャンプ場の主のような存在であります。まだこのようなキャンプ場になる前の留三郎小屋と呼ばれていたころから通い続けている。春・夏・秋の3回神奈川県も厚木から電車とバスを乗り継いで、文庫本6冊ほど・焼酎・着替えWalkmanに小型スピーカ・食料・いいちこ等々をバックに詰めてやってきて廃屋(はいおく)のような留三郎小屋で1週間ほど過ごすのである。
 そしてその過ごし方が実に感動的なのであります。小屋の前に薪ストーブを出しまずは焚火を始めます。食事の煮炊きはすべて薪ストーブでおこないます。小さな薬缶には常にお湯を沸かしており、お茶を飲んだり、時には焼酎のお湯割りをつくってチビチビやります。自前の椅子にどっかりと座り飲み食いしていない間は徹底して読書をします。後ろには小さなスピーカーから時にジャズが流れていたり、ブルースであったり、演歌・歌謡曲・フォーク・・・だったりします。そうやっていると持ってきた文庫本6冊なんてのは2日か3日で読み終えてしまいます。仕方がないからまた最初から読み返すしかないそうなのです。

 夕闇が忍び足でやってくるころ、「おーーい、こっちきて呑まないか」と声がかかった。急いでビールと焼酎を持って薪ストーブの近くに座る。一日の終わりを象徴するような夕陽の断末魔が向かい側の山を力弱く染めていく。キャンプ場は誰もいない。曲は突然クラプトンのアンプラグドに変わる。あれ?おっさんクラプトン知ってるんだと内心かなり驚く。

 「岩魚汁なんて喰ったことないだろ。明日喰わしてやるからよ」とぼそぼそ呟いたのでどうせ酔っぱらっての戯言だろうと聞き流しておいたら、翌朝本当に型のいい岩魚を二匹釣ってきて味噌仕立ての岩魚汁を食わせてくれた。

 「昔はよ、何十匹も釣るのを生き甲斐にしている時もあったんだけど、それはかなり虚しいことにある日気がついたんだよ。だからよ、食える分だけ釣ればそれでいいことにしているんだよ」
 ムム、デキルこの男すでに達観している。ただの年喰った座敷童(わらし)ではないことは確かだ。

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 「温泉行くときはどうしてるの?管理人さんの車にでも便乗するの」
 「それじゃあ何のためにここに来てるんだい。歩くのよ自分の足で」
 「ええええ!片道どのぐらいかかるの」
 「一時間だね。往復二時間だよ。ゆっくり歩くから道の傍の草花もじっくり観ることができるし、楽しいじゃないか」
 「・・・・・・・・・」
 私のすでに忘れてしまっていたものを思い起こさせてくれる会話であった。そしてその日彼は実際に村まで歩いて温泉と買い物とそして、先代の管理人のおばあちゃんに会いに行ったのでありました。

 今でも夕闇の中で酒を酌み交わした数時間が夢でなかったのかと思われるぐらいに幽玄な時でありました。サトやんまた呑もうね。
 

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