エマーソン、レイク&パーマー。懐かしいですねえ。
1970年代前後のロック界は、竹の子の如く跳梁跋扈したグループが再編していく時代でした。
エリック・クラプトンはクリームをやめて、スティーブ・ウィンウッドとブラインド・フェイスを結成し、 ホリーズのグレアム・ナッシュは、バッファロー・スプリングフィールドのスティーブン・スティルスとバーズのデヴィッド・クロスビーと組んでCSNを始める。
といったように再編の時代であったように思えます。
EL&Pもご多聞に漏れず、俗にいうスーパーバンドの1つで、ザ・ナイスのキース・エマーソン、キング・クリムゾンのグレッグ・レイク、アトミック・ルースターのカールパーマーという3人で結成した巨大なバンドだったわけであります。
サウンドは実に新時代なものでした。1stの「Emerson, lake and palmer」では「Take a Pebble」のようにピアノの弦を直接はじいていたり、落ち着いたサウンドを聞かせる一方で「Tank」のような正に戦車の如きバスドラの8連打を聴かせる荒々しさ、「Lucky Man」に聴かれるムーグシンセサイザーの導入と実にプログレッシブ(先進的)な試みが見られていると言っても過言ではないでしょう。
2ndの「Tarkus」では20分以上を超える大曲「Tarkus」を演奏し、プログレ4天王の名を欲しいままにしたのであります。
ただ、さすがにスーパーバンドであったせいか、メンバー間の目立ちたがりというのは徐々にヒートアップがなされ、カール・パーマーはバディ・リッチの如き、スネアロールとドラムソロを見せ、ドラムを叩きながら180度回転し、キース・エマーソンはナイフをオルガンに突き刺し、「トッカータとフーガ」をオルガンの反対方向から逆弾きし、ピアノを空中につり上げて縦に180度回転など、文面だけを読んでみると「なんじゃこりゃ?」な奇行を演じていたのであります。
プログレの人は基本キング・クリムゾンやピンク・フロイド。ジェネシス、イエスに代表されるように決してその出されるサウンドとは180度正反対の淡々と演奏していくのが常ですが、この点このバンドはある種のバカバカしさを備えていたといっても過言ではありません。しかし、そのサウンドは実に気持ちの良いものでした。
それは73年発表の「Brain Salad Surgery」(恐怖の頭脳改革)で頂点を極めます。チャールス・パリーの「聖地エルサレム」を高らかに演奏し、アルゼンチンの作曲家、アルベルト・ヒナステラの「Toccata」をティンパニ、チューブラ・ベルとシンセサイザーで構築しなおし斬新な解釈で演奏したり、グレッグ・レイクは変わらずアコースティック・ギターで叙情的な「Still... You Turn Me on」を歌い……と、各々の持ち味が生かされた好盤となりました。そして、特筆すべきはなんといっても「Karn Evil #9」でしょう。
30分以上に及ぶポップフレーズの羅列、ドンチャン騒ぎとも呼べるこの曲はEL&Pの大曲路線の終着点で、最高傑作であります。この曲に影響された人々は多く、ある部分はゲームミュージックに大きく影響を与え、ある部分は宇宙戦艦ヤマトに影響を与えた、実に影響力の大きく曲でありました。
バンドはこの後活力を失い、時代がプログレッシブロックから離れていくという時勢もあわせて、徐々に過去のものとなっていきますが、この衰退の決定打は「Love Beach」でしょう。ジャケットは今までの硬派な路線からはほど遠い、ヤケクソ気味の笑顔で並ぶ3人。「愛の浜辺で俺を待ってるぜ~」なタイトルは実にファンを失望させたものです。私的にはいい曲もあって結構好きなんですが、世には受けなかったアルバムでありました。
その数年後、エマーソンとレイクはジェフ・ベック・グループ、レインボー、マイケル・シェンカー・グループと渡り歩いていた名ハードロックドラマー、コージー・パウエルを迎えて、Emerson,Lake & Powellという名前で再結成し、傑作を一枚残すのですが、それはまたいつかお話ししましょう。
私がこのグループを好きなのは前述したとおり、プログレには似つかわしくない破天荒さを持っていたからです。やってることが無茶というか、ある種のバカバカしさがとても面白いものであったし、キース・エマーソンの弾く鍵盤からはエマーソン節としかいいようがない非常にカッコいいフレーズがでてきたからでしょう。
演奏するクラシック曲にアメリカ人作曲家を採りあげたのも良い、アーロン・コープランドはこのグループで知ったし、「Knife Edge」ではヤナーチェクの「シンフォエッタ」とバッハの「フランス組曲」を繋げて展開するなど、クラシックの普及にも一役買った気がします。
カール・パーマー。この人のリズムキープの怪しさも魅力的なもので、ライブではバスドラをドコドコしながらシャツを脱ぐというストリップパフォーマンスをするんですが、その時にバスドラのリズムが怪しくなるとか、後に加入するASIAの「Heat Of The Moment」ではこれもまたリズムの怪しいギターのスティーヴ・ハウと相まって曲の終わりのほうは妙なことになっていたりと、上手いのか上手くないのか、よくわからないそこいらのドラマーとはかけ離れているところがステキです。ただ豊富なオカズのアイデアと早いシングルストロークやティンパニの使用、楽譜が読めるなど、エマーソンとの相性は抜群でした。
グレッグ・レイクは先の2人のインパクトに比べると幾分か弱いのですが、ベースを弾きながら歌い、ギターもこなすという多彩ぶりには目を見張るものがあります。「Karn Evil #9」なんかはギターが入っていないと成り立たない曲ですしね。それに「The Sage」「From The Begining」といったアコーティック・ギターの曲も実に良い。プロデューサーの名前はエマーソン曰く「勝手に名乗ってただけ」「名義だけ」みたいな感じらしいですが、キング・クリムゾンの人脈から詩人のピート・シンフィールドを引っ張ってきたり、間違いなくアルバムコンセプトには一枚噛んでいるはずです。
Emerson,Lake & Palmer。これからもキーボードロックの金字塔として後世にその名を残していくことでしょう。By Shirataki
0 件のコメント:
コメントを投稿